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【祝】商標「ゆっくり〇〇」に拒絶通知!拒絶なのにめでたい理由を、弁理士受験生視点から解説します

(写真はイメージです。今回通知されたのは解雇ではなく拒絶査定です)

 

2023年2月7日、「ゆっくり実況」「ゆっくり解説」「ゆっくり劇場」に拒絶査定通知がされました。

拒絶っていう言葉の響きから悪いニュースのようですが、実はこれ、誰にとっても良い展開なんです。

僕としてもかなり気になるニュースでいろいろ調べてみたので、解説していきたいと思います。

 

結論だけ先に述べると、拒絶査定通知が良いのは以下の理由です。

 

ポイント!   ①特許庁が「ゆっくり〇〇」を広く認知された言葉と認めた
  ②第三者が「ゆっくり〇〇」の商標をとれる可能性が極めて低い

 

これだけ見てもどうしてそうなるのかぱっとはわかりにくいと思うので、以下で解説していきます。

 

なお、僕は弁理士試験勉強中の身なので間違いがあるかもしれません。

コメントで指摘していただけると助かります。

 

本記事は2023年2月16日現在の情報をもとに作成しています。

 

目次

 

 

1 そもそも「ゆっくり〇〇」とは

この界隈に詳しくない人もいると思いますので、超ざっくりと説明します。

ゆっくりとは下のようなキャラたちが機械音声で話すものを言います。

動画のサムネ例 ※この動画は存在しません

このキャラクターは東方というゲームシリーズの作者であるZUN様によって生み出された「博麗霊夢」と「霧雨魔理沙」が元になっています。

ZUN様はガイドラインに従う限りは二次創作を自由にすることを公言しており、そのためにこの饅頭のようなキャラが生まれました。

そしてこの饅頭にテキスト読み上げソフトのSoftalkにより声が当てられたことで、多くの動画に利用され親しまれることになりました。

これら実況、解説等は「ゆっくり〇〇」と呼ばれ、そのうち「ゆっくり茶番劇」とは、これらのキャラを用いた会話劇の名称です。

 

つまり商標権の取得はしてないけど、「ゆっくり〇〇」の名前を使うのも動画を作るのもご自由に状態だった訳です。

 

2 ゆっくり茶番劇騒動

ことの発端はyoutuberの柚葉氏が「『ゆっくり茶番劇』の商標取ったから、これから使う時はライセンス料払ってね!」と宣言したことです。

柚葉氏は東方やゆっくりの誕生には何の関わりもない人物であり、第三者が利益を横取りしようとしているとして大炎上しました。

これにはゆっくり動画を作るのが趣味の僕(公開してないので無影響ではありますが)もさすがにどうかと思いました。

普段からよく見るってのもありますし。

実際、僕もオンラインの署名活動には参加しました。

 

この騒動を受けて東方原作者のZUN様やゆっくり動画の投稿が多いニコニコ動画の運営であるドワンゴが立ち上がりました。

かなり色々なことがあった末に、ゆっくり茶番劇の商標は取り下げられ、無効審判での請求も受け入れられ、この騒動は終息しました。

 

本件はwikipediaにページがあるほか、様々なところで取り上げられていますのでこれ以上の解説は割愛します。

 

なお、特許庁公式の文書は以下から閲覧できます。

右側の「経過情報」のボタンを押すと、取り消しや無効の経緯を確認できます。

www.j-platpat.inpit.go.jp

 

3 商標提出

騒動自体は終結しましたが、このままだと第二の柚葉氏を生み出しかねません。

そこでドワンゴは「ゆっくり実況」「ゆっくり解説」「ゆっくり劇場」の3つの商標を申請しました。

これが通れば第三者が同じ商標を得ることはできませんし、ドワンゴでしたらライセンス料とか言い出すこと可能性もほぼゼロでしょう。

 

4 今回の判定

…と思ってたのですが、本当の狙いは商標を取ることではなかったようです。

(もちろん通っちゃったら通っちゃったで問題はなかったと思いますが)

 

今回通知されたのは、拒絶査定でした。

拒絶査定通知というのは厳密には拒絶されたのではなく、雑に言うと「あんたの商標通す気ないけど、文句(意見)あるなら30日以内なら聞いてやる」というものです。

なのでここでの意見次第では、拒絶が取り消される可能性もあります。

 

ゆっくり実況の拒絶査定通知の一部を引用します。

(ゆっくり解説、ゆっくり劇場にも同様の記述があります)

 

 そして、本願指定商品・役務を関連する分野において、「ゆっくり実況」の文字は、「「ゆっくりしていってね!!!」や「ゆっくり」と称されるイラストや、日本語音声合成ソフトから生成された音声が用いられている、ゲーム等の様子を実況する動画」を表すものとして広く使用されており、多数の者により動画が作成・配信されている実情も見受けられます(別掲参照)

 そうすると、本願商標を本願の指定商品・役務中、下記の指定商品・役務に使用したときは、これに接する取引者、需要者は、当該商品・役務が「「ゆっくりしていってね!!!」や「ゆっくり」と称されるイラストや、日本語音声合成ソフトから生成された音声が用いられている、ゲーム等の様子を実況する動画」を内容とするものであると理解、認識するにとどまりますから、本願商標は、商品の品質又は役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものと認められます。

 

全文はこちらから

www.j-platpat.inpit.go.jp

 

堅苦しい文章なので少々読みづらいですが、ざっくりいうと「『ゆっくり』って有名だよね?もうみんな知ってるものを商標にするのは無理だよ」ということです。

(ざっくりしすぎの気もしますが)

これがまとめ1で説明した、特許庁が「ゆっくり〇〇」を広く認知された言葉と認めた!ということです。

 

ここで一度このような理由で無理と言われているので、同じような商標が提出されても、同じように「ゆっくり有名だし…」で拒絶される可能性が極めて高いです。

(査定は審査官次第なとこがあるので、すり抜けてしまう可能性がゼロとは言えませんが)

だからポイント2の 「第三者が「ゆっくり〇〇」の商標をとれる可能性が極めて低い !」ということになります。

 

実際今回の拒絶査定について、ドワンゴ側は「この判断を歓迎」と公式twitterにて発言しています。

 

 

記事執筆時点で拒絶査定通知から30日経過していないのでどうするかは分かりませんが、意見書の提出はしないような気がしますね。

今回の場合、商標権は取れないほうがよくて、もしドワンゴが商標権を取得出来ちゃった場合、ドワンゴとしては商標登録料の支払いが発生しますし、利用者としてもライセンス料取らないと宣言していても数年後に変える可能性もゼロではないので不安は消えません。

だから、これが誰にとってもハッピーエンドだと思います。

(といろいろ調べて、そう思うようになりました)

 

まとめ

ポイント!   ①特許庁が「ゆっくり〇〇」を広く認知された言葉と認めた
  ②第三者が「ゆっくり〇〇」の商標をとれる可能性が極めて低い

 

今回、初めて時事ネタをまとめてみましたがいかがでしたでしょうか。

 

拒絶査定通知の別掲にはYouTubeやたくっち様など、知ってる言葉がたくさん出てきて面白いです。

興味あればJ-platpatから誰でも閲覧できますので、興味があれば読んでみてください。

 

最後までご覧いただきありがとうございました!